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陽気なギャングの日常と襲撃
伊坂幸太郎/祥伝社ノンノベル

 あの4人組にまた会える。
 以前紹介した陽気なギャングが地球を回すの続編です。
 前半は銀行強盗4名それぞれの日常を描いた短編で始まり、それを踏まえて後半では全員が集まり誘拐事件に首を突っ込む形で物語が進みます。
 兎にも角にも相変らず僕は響野さんが好きでね!
 自ら響野さんになりたいくらいですよ!
 ロマンはここにもあった!
 
 引き続き個性豊かな4人組が愉快に動き回りますので、前作を読んでから読むべきだと思います。その方が楽しめますし、これだけ買って読むと言うのなら前作だけ読んだ方がいいです。
 前作を読んで、4人組の軽快な語り口をもう一度、と思う方は、ぜひとも読むべき。面白かった。

2009.06.13

 



理性の限界――不可能性・不確定性・不完全性
高橋 昌一郎/講談社現代新書

 本書はあらゆる分野の人々を集めた討論会を模して「選択の限界」「科学の限界」「知性の限界」という三つの観点から「理性の限界」へ近づいていく、目次を見るだけでもれなくわくわくしちゃう本です。
 私は専門知識を持ち合わせていないわけですが、一つ一つの分野についてわかりやすく噛み砕いて説明されているので非常に読みやすかったです。
 「完全に民主的な社会決定方式が存在しない」「証明不可能な真理が存在する」とかいうのを証明できてしまうことに驚きです。数学すごすぎる。
 
 ラプラスの悪魔、人間機械論、囚人のジレンマ、語用論的パラドックスなどなど、とても興味深い内容でした。

2009.06.23

 



鴨川ホルモー
万城目 学/角川文庫

 最近映画も上映されたらしいこの作品。 京都の大学生達が「ホルモー」と呼ばれる不可思議な競技に興じる青春小説です。むずむずするね!
 主人公は京大青竜会という謎のサークルの新歓コンパで早良良子と出会い、その鼻に一目ぼれ。鼻についてあれこれ言及されていて少し驚きました。新境地。最初から最後まで気の抜けたような雰囲気でのんびり読めてよかったです。
 友情、努力、勝利! と青春小説らしい作品でした。いや、勝利はできてないのか? できたのか?

2009.06.29

 



太陽の塔
森見 登美彦/新潮文庫

 これもまた舞台は京都、森見登美彦氏のデビュー作だそうです。
 そして、やはりその独特な文体にがっしり心掴まれた私は、作者のファンになってしまいそうです。オススメ。

 読み始めは、性質の悪いストーカーの話かと思いましたが、まったくもってとんでもない。彼はそんな人間ではなかった。
 主人公とその仲間達は、クリスマスやバレンタイン、カップルを忌み嫌い、それをぶち壊そうと画策します。
 お話自体は最後の「ええじゃないか」でむわんと盛り上がるくらいで、あまり山も谷もなく淡々と進んでゆきますが、しかしまたその言い回しや雰囲気がいちいち心地よい。
 
 それと、すごくどうでもよいのだけど
 表紙がすごくキレイで格好いい。
 

2009.07.02

 



終末のフール
伊坂幸太郎/集英社文庫

 「8年後に小惑星が落ちてきて地球が滅亡する」と発表されて5年後。
 終末を知らされた人々による混乱は一段落し、人々は再び平穏な生活をおくりはじめる。静かに世界の終わりが近づく中、生きる人々の短編集です。

 最近までハードカバーでしか売られていなかったのですが、この間書店をふらふらしているとちょうどよく文庫になっているのを発見し、手に取りました。
 世界の終わりというのは、それも地球に小惑星が衝突するなんて、人々がてんやわんやの大騒ぎでなかなかに騒々しいイメージがあるのですが、本書はことに至る前の絶妙な期間を描いているからなのか、とても穏やかな日常が流れています。それがまた哀しい。よいお話でした。
 
 「終末のフール」の特設サイトなんかもあるみたいなので、興味のある方は検索してみるといいですよ。伊坂幸太郎の「終末のフール」制作秘話なんかが見れます。見るまでが少しめんどうくさいですが。
 

2009.07.09

 




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