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旅に出よう、滅びゆく世界の果てまで。
萬屋直人/電撃文庫

 世界は「喪失症」により、穏やかに滅びつつあった。

 この時点で読まずにはいられないわけで。切なそうな感じ。大好き。
 作中の世界で蔓延する「喪失症」とは、ありとあらゆる物(者)の名前、存在が消えてしまう病気で、未然に防ぐことも、進行を遅らせる薬などもない。という絶望的すぎる症状。
 そんな容赦ない症状が広がる世界で、少年と少女は旅を続けます。世界の果てを目指して。道中色々な人に出会うわけですが、喪失症で人口が減り、生活が困難になっているにもかかわらず、みんなどこか生き生きとしているんですよ。自分達もいずれ消えてしまうのに。関係なく、今を生きる。
 自分の生きてきた軌跡が、全く残らない。それでも、大切な誰かが私という人間がいたということを少しだけでも覚えていてくれるなら、そういうのもいいのかなって思えました。そういえば、こういう話は一番最後に残る人のことを考えると頭が痛くなりますね。

 なんて旅に出たくなる本なんだ! 俺も旅に出る!
 (荷物だけの後部座席を見つめながら)
 



死神の精度
伊坂幸太郎/文春文庫

 調査対象の人間が死ぬべきか否かを決定するために人間界へと派遣された死神、「千葉」を主人公とした伊坂幸太郎の短編集です。
 人の死に興味がない、そんな死神の好きなものは音楽。仕事の合間にCDショップに足を運び、試聴機の前で何時間でも時間を潰す。人間とは別のものなのに、妙に人間臭く描かれた死神がとても魅力的で、セリフ回しもクールでセンスがよい。
 
 短編集なのですがそれぞれが完全に孤立した物語ではありません。残り数ページとなった時、この作品「死神の精度」という世界が、ばーっと広がる音がします。 とても素晴らしい本でした!



不気味で素朴な囲われたきみとぼくの壊れた世界
西尾維新/講談社ノベルス

 タイトルながっ
 世界シリーズ第4作目です! 登場人物的に2作目「不気味で素朴な囲われた世界」の続編にあたるお話で、14年の年月を経て、自身の目標である「飄々としてつかみどころのない人間」となった串中弔士が登場します。女子高の倫理教師ですが、女装はしてません。語り部はまた別の、穴埋めでよこされた臨時教師なのですが、それはまぁ、読んで確かめてみてください。
 なんというか、串中弔士のように「飄々としてつかみどころのないお話」という感じでした。
 とりあえず、過去のシリーズを読んでいないと楽しめないと思います。単体で楽しめる1作目、2作目と、その後の3作目、そして今作は色合いが違う気がしました。うまく説明できませんが。
 
 さてーそして次回で世界シリーズ最終巻(本当に)! 我らの黒猫さんの中学時代だそうです! 楽しみだ!
 しかし、夜月分が圧倒的に足りていない。



扉の外
土橋真二郎/電撃文庫

 とある方に「電撃文庫は金賞に選ばれた作品は伸びないというジンクスがある」と教えられました金賞作品。しかし、この作品が伸びたのか伸びなかったのかはしりませんけどもいやはや面白かったです。
 修学旅行に行くはずだった千葉紀之とそのクラス二年四組一行は、見知らぬ閉ざされた空間で目を覚ます。突然の状況に混乱が広がる中、生徒達の前に姿を現した“人工知能ソフィア”が提示したのは唯一絶対のルール。ソフィアに従えば安全は保障されるとのことだが、千葉紀之はクラスでただ一人、そのルールを拒否。しだいにクラスから孤立してゆく千葉紀之だったが、みたいな話。
 閉ざされた空間で、大人数が集まっていればそれは小さな社会。秩序を乱すものは敵とされる。人間の醜さを垣間見た気がします。
 
 
 この作品のようなラストは、納得いかない気もするけど、なかなかに好きです。まぁ、釈然としないことは確か。
 それでもよいものだった! それにしてもギャルゲーに出てきそうな主人公だなー。



重力ピエロ
伊坂幸太郎/新潮文庫

 遺伝子関係の会社に勤める兄「泉水」と血のつながらない弟「春」の周りで奇妙な連続放火事件が発生します。この兄弟の父親がなかなかにカッコよく、終盤のセリフには痺れました。家族ってなんだろう。
 伊坂作品ってレイプや放火といった重々しい内容でも、なぜか軽々しく感じるんですけど私だけかしら。読みやすいんですが。
 今年の5月に映画化されるようで、楽しみです。それよりも鴨とアヒルのコインロッカーをどうやって映像化したのかが気になりますけども。

2009.01.30




クビシメロマンチスト
西尾維新/講談社ノベルス

 面白いなー。西尾維新。哀川潤はステキだし。
 前作クビキリサイクルの事件から二週間後、京都で大学生活をおくるいーちゃんは、連続殺人鬼「零崎人識」と出会います。ぶっ壊れた日常
 この作品は事件のトリックというよりも、何故そんなことをしたのかというのが重要。に感じました。本当の友達ってなんだろうってね。
 あと西尾維新の作品は、ほいほい人が死にまくりですが、私がそんなにミステリを読んでないからそう感じるだけかしら? 「不気味で素朴な囲われたきみとぼくの壊れた世界」とか。まぁそれは別枠として考えるべきかとも思いますが。
 
 あえて言えば、玖渚友にもっと出番を!
 次回は結構ありそうですけどね。

2009.02.04








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